★ 5.25 ★

「おい」
「…あー」
「…おい?」
「あ〜」
「…おい、サンジ」
「ギャ―――ッ!!!!!」

 名前を呼ぶと主人は逃げ出す。
 最初は茫然とし、次に小刻みに震え、そのままドアにむかって突進して逃げ出すか、10〜20分延々畳の上で転がり続ける。
(わかんねえ)
 子犬は途方にくれてサンジを見るしかない。
 だって主人の行動ときたら奇怪というほかないのだ。挙動不審で随分ぼんやりしてる。
 この間エースがきてから、随分行動に怪しさが増した。
(人間の姿だからか?)
 よくわからないのだが、サンジは時々何がいいたげにじい〜っと自分を見つめている。目を合わすと慌ててそらす。
(???)
 ゾロにとってはますます不思議な行動だ。元々破天荒な底抜け男だが、さしもの常識知らずの犬ですら、その行動は奇異にうつる。
「くぅん?」
 仕方がないので犬の姿でサンジの足元にすりよると、なんだか泣きそうな目をしていて仰天した。
(なんだ、こいつ!)
 腹でもくだしたのかもしれない、それとも女にフラれた?バイトをクビになった?
「…ゾロォ…」
 ぎゅうと首根っこに抱きついてきた主人をあやすようにして、ぱたぱた尻尾を振ってやる。
「俺…俺ァ、どうしたらいいんだ…」
(話せばいいじゃねえか。何のために俺がいるんだ)
「ヴォウッ」
「…ゾロ…でも、俺―――」
「泣きそうな顔してるぞ、何があった?」

「………ぎぃぃぃあああわああああ〜!!!!」

 犬の姿では喋ることが…問い詰めることができない。
 咄嗟に人間に戻ったらば、サンジは仰け反ってテーブルに思いきり頭をぶつけてノビた。
「……。おお〜い?」
 ぺちぺち頬を叩いても何だか真っ赤な顔して気絶してるサンジにますます途方にくれて、ゾロは首を傾げた。
「だから、なんだってんだよ…?」

 サンジが目覚めた時、再びゾロは彼に絶叫されることになる。
「なんなんだ、一体」
 ミドルキックを食らわされて茫然とするゾロは、まさか膝枕していたことが原因でサンジの神経をぷっつんさせちゃったことなど、想像する余地もなかった。

■掲示板に書いた05のおまけで06フライング。
02/08/31
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