+ 休息 +


 震える手を、自覚できた。
「……ナミ」
 呼びかけても反応のない、異常に熱い身体。
 苦しそうに息を吐く唇を見つめる。
「ナミ」
 何も出来ない。
 苦しそうな彼女を見ても自分には何も出来ない。
(おれが)
 おれが、困った時。
 この少女はいつも何でもしてくれたのに、不甲斐ない。
「ナミ……起きねェのか?」
 呼びかければナミはいつも起きてくれたのに、どうして。どうして今度は起きてくれないのだろう。
「ナミ、ナミ」
 起きてくれ。
 名前を呼んでくれ。
 ――――笑ってくれ。
 せっかく、せっかく、自由になったのに。
「ナミ……」


 神に祈りを捧げたのは、きっとこれが初めてだった。




「何よ、ルフィ。人の顔ばっかり見て」
 いつまで経っても視線を逸らす気配のない少年に、さすがに照れが自覚できた。
「ちょっと。何見てんのってば」
「……んん」
「何よそれわかんないじゃないの」
 いまだ絶対安静を命ぜられベッドに起き上がることすらさせてもらえない。その傍らに椅子を引っ張ってきて腰かけたまま一時も離れようとしないルフィにさすがのナミも辟易した。
「あんた、どうしちゃったの。いつもの元気がないじゃない?」
「だって、ナミが」
「私が何?」
 うつむいてしまったルフィの顔はナミの位置からはよく見えない。その顔をもっときちんと見たくて、ナミは細い手を伸ばし、頬に触れた。
「ルフィ?」
「……ナミが……」
 ナミの手を愛しそうに己の手で包み込んだルフィの声が震える。
 泣いているのだろうか?
 ナミは訝しく思いもう一度強く彼の名を呼ぼうとした、その一瞬早く。

「なみが、しぬかと、おもった」

 たどたどしい発音で一句一句切り離すルフィの言葉があまりに不自然でナミは眉をひそめた。
「死んでないわよ」
「知ってる」
「怖かったの?」
 起き上がろうとした身体はあっさりとルフィに遮られる。こんなにも力の強い男が、女一人の喪失の恐怖に怯える、その事実。
「こわか、った」
 子供のような事を言う。

 可能性。
 死。
 危険。
 喪失。
 熱。
 苦痛。

 そんな言葉ばかり頭を巡って巡って堪らなく痛かった。

 どうしテおきナイんダろうこんナなみハしらナいきッとすグにめをあケてるふぃッテなヲよんでワラうンだいつモみたイに

「こわカ、ったんだ」

 壊れた機械のような、声。
 汚い音を出すオルゴールのような純粋さで不安を訴える。

「お前が、イなくなるナんて」
「……うん。もういいわ」
 ルフィの頭を引き寄せ、胸の中に抱え込んだ。あたたかく柔らかなぬくもりに包まれたルフィがほうっと息を吐く。
 ため息に似た、安堵の吐息だった。
「もういいわ、ルフィ。何も傷つくことなんてないのよ」
 私はここにいるのよ、とつぶやいたその振動に合わせ。

 耳に聴こえた、ナミの心臓の音血の通う音。

 生きている、証。

「だから少し――――眠りなさい」
 此処ででもいいから、今はただ。何も考えずに眠ればいい。
 目を開けたらそこにまた、ナミの笑顔はあるのだから。
 もう悪夢なんて見なくていい。
「今度は私が……あんたの寝顔を見ていてあげる」
 ここにいる証明をしてあげる。
 私があなたを起こしてあげる。
「だって私は、元気なんだもの」

 だからだからどうかお眠り。
 もう不安を運ぶ黒い闇に脅える必要はないのだから。

「おやすみ、ルフィ……」
 幼子の表情で眠るルフィの額に、ひとつだけナミはくちづけを落とした。



■ゆっきーから(お誕生日プレゼントに?)いただいたルナミです!
■ウチ(198)にはマトモなルナミがないので(笑)嬉しいです。ほわわ〜ん!ルナミルナミ!!
■本人曰く「ルフィがおかしい」とのことですが、ナミの前だけではほんの少し、弱くなる一面を持つルヒーもいいと思うですヨ。
■ナミさんが聖母のようだ…(照)しかし第一変換が歳暮とはこれいかに。
■由基淋野よ有り難う。お返しはすぐだな。ヤバ!(笑)

■ゆんちゃんのサイト
[WATER BLUE]はWJ系(ONE PIECE:ルナミ、NARUTO:サスナル)セラフィムスパイラル(御神薙&暁人)などを中心に小説・CGなどがあります。是非遊びにいってみてくださいね!


02/01/18

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