+ be concerned +

 おれにはちっともわからない。
 ルフィが何を思ったかも、ナミがどう感じているかも、おれにはちっともわからない。
 笑った顔が一瞬だけ曇ったのは知ってる。
 誰にも気がつかれないように下を向いて、口だけは笑顔で、目を翳らせたことだけは知っている。
 おれは背が低いから。
 ちっちゃくなって、ナミを下から見上げてたから。
 だから、気がつかれないようにしたナミの顔に、気がついた。


 ナミは。


 泣きそうになったのを無理矢理作った笑顔で堪えようとしていた。


 とても、痛そうに。








 とても、仲が良かったのは知っている。
 時折顔を寄せ合いあって、内緒話をして、笑い合う。
 いつも一緒の紅茶を飲んで。いつも一緒のデザートを食べて。時折違う紅茶を飲んで、互いのコップを少しだけ、交換してた。
 憎まれ口を叩くナミと。
 苦笑してたしなめるビビ。
 とても、仲が良かったのは知っている。
 誰もが知っている。
 だから、ビビがいなくなって、誰が一番悲しかったかなんて、誰も言わなかった。言っても意味がなく、みな同じというわけでもなければ、みな違うというわけでもなかったのだから。
 左腕の、バツ印を、時折。
 ――――とてもとても、哀しそうに撫でて。
 時折。
 その上に頬を乗せて、目を閉じる。
 そういうナミを、おれは時々見かけた。そういうナミを、おれはどうしたらいいかわからなくて見ていた。
(だけどそういうナミを引っ張るのはいつも)
 元気をなくすナミをどこからか必ず見つけて、必ず笑って誘いに来る。
 太陽の笑顔。海賊王を目指すという、いつでも元気な船長。


 …………ルフィ。


「……すごいよな」
「?なあに、船医さん」
 階段に座ってぽつりとひとりごちたら、しっかりと隣のロビンに聞かれてた。慌ててふるふると首を振る。
「あ、うん、ええと、ルフィ」
「ああ……」
 おれの支離滅裂な言葉を、それでもロビンは理解したらしかった。
「航海士さんのことね?」
「うん……よくわかったな」
「ふふ」
 ロビンの視線が、おれたちの少し先、甲板でぎゃあぎゃあと何事か言い合っているルフィとナミを向いた。
「行動理念よね。ある意味」
「行動理念?」
「そう。……自分が興味あることに、真っ直ぐだから。だから航海士さんのことも、ずっと見てる」
 真っ直ぐに、真っ直ぐに。
 その視線はナミを捕えてる。
「だからちょっと哀しそうな顔をすれば、すぐにわかるのね」
「そうか……だから、駆けつけられるのか?」
「そういうこと」
 おれは改めて、ルフィと口喧嘩しているナミを見た。怒りに顔を真っ赤にしているナミは、ルフィに食ってかかっていって、わめきちらしている。
 あれは、相当なストレス解消になるだろう。笑いながらナミの怒りをのらりくらりとかわしているルフィは、わかっててやってるんだろうかと不思議に思った。
 ナミが溜め込まないように。ナミが涙を流す暇もないくらいに。
 おれがぼーっとルフィとナミを眺めていたら、ロビンが静かにため息をついた。
 どうしたのかと思って、おれはロビンを見る。視線に気付いたロビンが、軽く肩をすくめた。
「あの航海士さん……わたしのこと、複雑でしょうね」
「そんなことないぞ」
「そんなことないだろ」
「そんなことないですよロビンちゃ〜ん!!」
 答えた声は、三つだった。
 おれと、………ゾロと、サンジ?ん?何で?
 ロビンも驚いたみたいで、首を傾げて何をしているの、と訊いた。顔を見合わせたゾロとサンジは口々に何か言い始めた。
「あいつら騒いでるから」
「そしたら見なくちゃだろっ!?」
「じれったいんだいい加減」
「いっつもおれら後ろからそこだ行けーって応援するんだけど伝わらなくてよぉ」
「いや伝わらねぇだろそれは」
「そうか?」
「そうだろ」
「けど応援はしないとな。いつまで経っても進展しねぇだろ」
「まあな。しねぇな」
「だろ?だから観察だ応援だ」
「ああ」
 ロビンに答えてたはずが、いつの間にか二人で会話して納得してる。よくわからねぇぞ。
「……つまり、いっつも二人で観察してるわけ?」
「そう」
「そうだ」
「そういうの、でばがめっつーんだぞお前ら……」
「あ、ウソップ」
 おれたちの後ろにウソップが座ってた。船員全員がこの場に集まってきたことになる。
 ……でもふと見ればルフィとナミは相変わらず喧嘩していた。
 それをおれたちは、全員でつかず離れずの場所から見ている。はっきり言って異様だった。


 ……でも、ナミが、元気だ。


 ナミは元気をなくしてる。ビビがナミの元気を持ってる。
 でも、ルフィが元気を分けている。ルフィがナミを元気にしている。


 とても、仲が良かったのは知っている。
 二人で顔を寄せ合って。笑い合っていたのを誰もが知っている。
 だからルフィも知っている。
 痛そうに笑い泣きそうになっているナミを、知っている。


 真っ直ぐに真っ直ぐに、笑えるように。
 タイミングよく、ナミを引っ張る。








「あ、殴られた」




 ウソップが放った一言に全員でルフィとナミを見て。
 ナミに拳骨を食らっているルフィに、進展はまだまだ先かと全員でため息をついた。




 でも、拳を口元に持っていったナミが、嬉しそうに笑ったのを、おれは見た。


■双子の妹、由基淋野のところでダウンロード・フリーになってたので、がっつりいただいてマイリマシタ(笑)
■お姉ちゃんのワタクシ、シキヲはルナミ好きのくせに創作を書こうとするとダメダーと投げ出してしまいます。かなりの…病的なほどの(褒め言葉)ルナミストであるゆんちゃんの文章は、可愛いです(笑)

■ゆんちゃんのサイト
[WATER BLUE]はWJ系(テニスの王子様:ドリーム小説 ONE PIECE:ルナミ・ゾロサン(笑)、NARUTO:サスナル)セラフィムスパイラル(御神薙&暁人)などを中心に小説・CGなどがあります。是非遊びにいってみてくださいね!


02/09/12

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