■ 物語のゆくえ ■
001/04/24//From 198Building/master*Shiki/DownloadFREE_shortstory
from ONEPIECE story...02/Storys
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「うわー!うわーっ! すっげえ! すっっげえ!」
「ハイハイ、わかったからもうちょっと落ち付いてよ」
 砂漠を夜中歩くということは、確かにビビ以外は初めてで、みんなルフィの言葉に釣られて顔をあげて、ついでに口もあんぐり開けた。
「すごい!」
 チョッパーも興奮したように言う。「すごい! 星がいっぱい降ってくるみたいだ!」
「あれ、食べれねえかなあ〜」
「いや、そりゃ無理だろー。おまえ」
 ルフィがもの欲しそうに指を咥え、ついでにじゅるっとヨダレを啜ったところでウソップがきちんとツッコミをいれる。
「でも、食べられそうなくらい、いっぱいだ」
 チョッパーがうわあ、と頬を染め、ついでにこてんと転がる。「ひゃあ!」
「ははっ。おいおい、チョッパー。大丈夫か?」
 星の光に勝るものはない…煙草の火をつけかけたサンジは、野暮なことはしまいとライターをしまって、隣ですっ転んだ船医に笑いかける。
「うん、でも寝転がったほうが、まるで目の中にまでいっぱい星があるみたいで、すごいんだ」
「よし、おれもやるぞ―――ッ!」
「ちょ、やめてよっ!ルフィっ!」
 砂埃を精一杯巻き上げて地面に倒れこんだルフィに文句を言うのはナミだ。
「見るのはいいけど、先に進まなきゃいけないってこと―――忘れないでね?」
 砂漠の夜は冷える。底冷えする。まるで全身を刺すように、じりじりと。
 砂も岩も、日中はイヤになるほど熱を吸い込むくせに、日が暮れれば瞬く間に冷えていくのだ。空も地面も寒いのに、その無情な大気はキンと冷え切った分、曇りのない星空をくれる。
「こうして降ってくるのを見るのもいいけど、掴めるくらい高いところでも、見てみたいなあ」
「星がつかめんのか! ほ、ほっしーい!」
「おまえ、それ、シャレかよッ!」
 チョッパーの言葉に目の色変えたルフィに再度、ウソップがツッコミを食らわせたところで、黙って星空を眺めていたゾロが、ようやく口を開いた。
「じゃあ、肩車でもしてやろうか」
『ええッ!』
 目の色変えた連中と、そんなことを言い出したゾロに驚愕の表情を向ける連中と、真っ二つに分れて―――声をかけられたらしいチョッパーは、一瞬驚き、でもはにかむように笑って剣士に飛び付いた。「まあ、俺に乗っかったところで届きゃしねェがな」
「いいよ、うれしい。ありがとう」
 ゾロの肩に飛びついてよじ登りはじめたチョッパーを見て、ルフィやウソップが喚き出す。
「あー! ああーっ! いいな!チョッパー、いいな!」
「ゾロ〜ン!おれも、おれもおんぶしてぇ〜ん!?」
「気持ち悪ィから寄るな」
 しっしと手足で払っても、年下二人は疲れが出たせいか足に背中にへばりついて離れない。
「ああー。もう、てめェら何なんだよ」
「Mr.ブシドー、な、懐かれちゃってますね」
 思わず、ビビが吹き出し、
「…あァ?」
 不満げな表情を隠さないゾロが剣呑な顔をする…と、
「てめェ、レディに対してンな顔すんじゃねえッ!」
「いいんです、サンジさん! だ、だって…」
 やるかコラァと睨みを利かせたサンジに、ビビは笑いながら…ほんの少し悪いかな、とも思いつつ…指を刺す。「ご、ごめんなさいっ…」
 肩車では、どうやらバランスを崩してしまうらしいチョッパーは、ゾロの頭の上にしがみつくようにちょこんといて、どんなに凄まれてもそれが視界に入るだけで、和んでしまう。
「…ぶっ…確かに」
「なんなんだ、てめェらはっ!」
 とうとうサンジも、そしてナミまで吹き出して、ゾロはチョッパーが落ちないように片手を添えながら憮然とする。
「ゾロ、ゾロ、首にぶら下がっていいか?」
「ゾロ〜。じゃあおれはおんぶを〜おんぶを要求する〜!」
 途端に元気を取り戻したらしいルフィと、対照的なウソップのねだりに根負けして、ゾロは「もう好きにしろ」とやや投げやりに呟く。
 頭に船医、背中に狙撃手、首元にびよんと手を絡ませた船長を抱え、それでも不動のゾロはさすがだろう。でも、どうしてもその光景は微笑ましいものに見えてしまって、ビビはくすくす笑いが止まらなくなる。
「いいな、少し羨ましい」
「んえっ! び、ビビちゃん!おれでよければ抱っこでもおんぶでもしちゃうよ〜!?」
 突然相好を崩したサンジに困ったように笑いかけて、ビビは遠慮しますと小さく呟く。
「あー。でもちょっと、ほんと、許せないわ! わたしを無視するなんて!」
 しょうがないわね、といった感じで腕組みしていたナミも、ビビの言葉を聞いてパンっと手を打つ。
「ちょっと、ウソップ! 交換しなさい!」
「な、ナニィ!?」
「ナミさんっ!」
 目を剥いたのはウソップとサンジ、驚いたのはビビも一緒。
 ウソップを引きずり下ろして、えいとナミがゾロに飛び付いたものだから不意打ちを食らったゾロが、さっきまでと違う感触に微かに驚き前のめりになる。すると呑気にぶら下がっていたルフィが顔面を砂にぶつけ、てっぺんにて悠々星空眺めていたチョッパーが慌てて叫ぶ。「うわ!ルフィ!」
「ギャー! な、な、ナミさんっ!なんてこと! そんなケダモノの背中にその豊満な夢のようなナイスバディをぉ一人占めさせるなんてぇえぇえ!」
「うるせェな、エロコック。おい、ナミ。
 これ以上喚かれるのはごめんだ、あのクソコックかルフィにでもしとけ」
「なによ、わたしに飛び付かれるのはイヤってわけ? 重いなんていったら承知しないわよ!」
「…ややこしくすんなよ」
 げんなりしたゾロの首をぎゅうっとしめて、うげえと呻くゾロに「仕方ないわね」と、それでも機嫌よくナミは砂地に下りた。「じゃあ、ルフィ! あんた、私をおんぶしなさい!」
「え! おれじゃないんですか!」
「サンジ君はさっき、とっても失礼なこと言ったから駄目」
 砂に埋もれてるルフィを引っ張り出して、ぴしゃんと叩くと元気良く船長は復活する。
 そんなナミさんも好きだあ〜と、対して砂漠に倒れこむサンジを尻目にナミはルフィに飛び付いて、ルフィもわけがわからないままナミを負ぶさった。
「ウソップさん、大丈夫?」
 ナミに張り倒されて転がっていたウソップに、ビビは声をかけた。
「立てるかしら…?」
「うう、すまねえ! 優しいのはお前だけだービビー!」
 一人哀愁を漂わせて佇むサンジを見つけて、ゾロの上からチョッパーは大きく言った。
「サンジ! さみしかったら、ゾロの背中におぶさればいいじゃないか?」
『んげえッ!』
 クソコックとクソマリモの不協和音が響いたところで、ビビが弾けるように笑い出す。
「このっ、ビビ笑うんじゃねえっ!」
 微かに引きつったゾロが言えば、
「よーし、ルフィ!走れ―――!」
「んっ!?走るのか!?」
 マツゲを従えてナミがルフィに命じるとルフィはそのまま勢い良く走り出す。
「ヤバイ、置いていくなぁ!」
「な、ナミさんっ! 待ってくださあい!」
 しかし突き飛ばされたダメージのあるウソップと、精神的なダメージを食らったサンジはへろへろで、ゾロは重い溜息をついて気合を入れた。
「うっし、仕方ねえ。行くぞ、チョッパー。しっかりつかまってろ!」
「うん!」
 頭のチョッパーがしっかり自分にしがみついたのを確認してから、右手にウソップ、左手にサンジを掴んで、喚く男二人をきっちり無視したのち―――ゾロはビビをふり返る。
「ビビ、飛び付け。支えらんねェから、しがみついてろ」
 ゾロの広い背中をまじまじ見て、ビビは綻んだ顔のまま、
「―――はいっ!」
 元気良く飛び付いた。

「ナミー!気持ちいいかっ!?」
「最高よ、船長! あ、追い付かれるっ! ルフィ、スピードアップ!アップ!」
「てめえっ! ゾロォッ! なんで引きずる…走れるっつの、放せ、放せって…クソ腹巻きィ!」
「ゾロ、鼻がッ!鼻ギャもがががががっ」
「うるせェ奴らだ、もうすぐ追い付くから大人しく引きずられてろっ」
「すごい、ゾロ! あとちょっと! あそこにマツゲとルフィたちがいるぞ!」
「Mr.ブシドー、もう少しっ!」


 静かな砂漠に、賑やかな笑い声が響いた。
 数年後、この静まり返った人気のない、砂の地で。
 砂が記憶した彼らの声に導かれるようにして、きっと、物語は続くのだ。
 物語のゆくえは、

 ビビが笑う。
 ナミが歓声を上げる。
 サンジが怒鳴り、
 ウソップが嘆く。
 ルフィが叫び、
 ゾロが吼え、
 チョッパーが慌てて振り向いて 

「ギャーッ! う、ウソップが落ちた!」
「取りには戻らねェぞ」
「ルフィ、もっともっと早くっ! 追い付かれちゃうじゃないっ!」
「おーし、全力だーっ!」


 これは終らない砂漠の記憶。


001/04/24//From 198Building/master*Shiki/DownloadFREE_shortstory
from ONEPIECE story...02/Storys
■オールメンバーズ、で、やっぱりゾロ贔屓目です(笑)
■198ビルヂング。一周年を記念して、2週間ばかし、ダウンロードフリーにしたいと思います。
最後のFrom〜からをつけていただければ、御気軽にDLして読んでいただくもよし、サイト様の隅っこに展示していただくのもよし、な作品なので御自由にどうぞ。
■久方ぶりのほのぼの系。ユバへ向かう途中か、そのあたりだと思われます。
■随分シリアスで張り詰めていたのだけれども、ビビちゃんや、他のみんなが砂漠を笑顔で歩いてくれたらいいなあと思いつつ書きました。(ホントはゾロビビにしようかと思っていたので、名残もありつつ)
■アニメでのウソップの「ゾロ、だっこして〜」は死後硬直するかと思いましたが、
■カワイイ鼻なので引きずらせました。

■いつまでもすばらしい旅を!!
02/04/24

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