* てのひらに眠り星 * |
夢を見た。 と、思った。 (なんだ?) 夢を見たはずなのに――― (覚えてねえし) のっそり上体を起こす。また、知らないうちに寝こけていたらしい。 甲板で寝ると、流石のゾロも少し筋肉がこわばる。 軽くほぐすように腕を伸ばし、枕代わりの砂袋を蹴りかけて、やめる。これを破ってしまうと枕がない。別段無くても平気だが、あったらあったほうがいい。一度小麦の入った麻袋を倉庫から持ち出して寝ていたらクソコックに蹴り飛ばされた。 あたりは暗い。いや、左側を向けば地平線が白んでいる。 「夜明けか」 ということは朝飯まで時間がある。時間があるということは寝ていいということだ。 「寝るか」 ごろんともう一度横になり、 (本当は寝なくていいのにね) 「―――ッ!」 もう一度、今度は素早く身を起こす。 聞こえた。空耳じゃない。今、確かに頭の中で囁き声がした。 「本当は寝なくていいのに…?」 思い出せない。 無性に、喉が渇いた。 *****The star which sleeps in the palm. 「ええー!」 あんぐりと口を開けたウソップと、ワンテンポ遅れて「ええー!」を繰り返したチョッパーに出迎えられてゾロは居心地悪そうに、不機嫌をよそおう。 「なんだよ」 「ゾロが!」 「ゾロが起きてる!!」 冬眠しているはずの熊が民家に現れた、みたいな態度を取られた。 「…。寝に戻ったほうがいいか」 「ぬわぁんだよ、ゾロー! 拗ねるなよー!」 「ゾロ、ゾロ!一緒にごはん!ごはん食べよう!」 くるりと身を翻しかけたゾロの右と左に、手のひら返したようなウソップとチョッパーがぶら下がり、自分の席に座って今か今かと朝飯を待ち構え、椅子をがたんがたん鳴らしてナミに怒られていたルフィが、面白いことをしている!とばかりに目を光らせ、ゾロの背中に飛び掛る。 「なにしてんだっ!? 俺も混ぜろっ!!」 「朝からモテモテねー。ゾロ?」 ナミが飽きれ、その隣でビビが思わず笑顔をこぼす。 「ナミさんったら」 「アホか。冗談言ってねェでこいつら剥がしてくれ」 「レディに対して暴言吐いてンじゃねえ」 最後に、料理をトレイに乗せてサンジが現れ、くいと顎で席を差す。 「オラ、レディを待たせるんじゃねェ!クソ野郎ども、とっとと持ち場に戻れ!」 『へいっ!』 ゾロ以外の連中が口を揃えてサンジに答え、ゾロは、知らない食卓風景を見つけて何だかおかしくなる。 ―――朝、起きて一緒に飯を食ってみるのも悪くない。 「…」 いただきますと各自が声を合わせたところで、黙々と飯を口に運んでいたゾロの動きが止まった。 「―――なんだ、クソ剣士」 「…」 「なにしてんだ、食えよ」 食事に関してこと敏感なサンジが目を釣り上げて言うのに。 「―――ゾロ?」 ナミが、チョッパーが顔を覗きこんでくる。 「具合でも悪いのか?」 ゾロ。 「…今日、何日だ」 茫然と立ち上がったゾロにウソップがカレンダーを指差す。 「七日だ」 「―――あー。分った。すまねえな」 すとんと、何事もなかったかのように席に戻るゾロに、無心に食っていたルフィが食い欠けを顔中につけたまま笑う。 「なんだ? なんか、あんのか?」 「ああ。ある」 ビビとウソップが目配せする。サンジが新しいお茶をそれぞれについでいく。 「ふーん。大事なことか?」 「そうだな」 忘れていた。忘れていたから、きっと呼びかけてきたのだろう。 (ゾロはすぐ、忘れるもの) 「―――そうだな」 二度繰り返したように聞こえたのか、ルフィがきょとんとしている。 違うと薄く笑って、ゾロは黙って食べ始めた。 そう、今日は何度目かの、くいなの命日だ。 「先に言っておくが…」 突然切り出した、ゾロの無表情に、仲間達がなんだなんだと不思議そうに顔をあげる。 「何が起こっても、気にするなよ。対したことじゃねえから」 くいなは笑って、甲板へ繋がる扉の前に寄りかかっている。 (だから、宿題!) 指を刺した。ゾロに目掛けて真っ直ぐに。 それをまぼろしだと頷くには、あまりに懐かしく名残惜しんでしまう。 *** 故郷ではその日を「七夕」といった。 あまり良く覚えてはいないのだが、夜空の星に住まう天上人の恋物語だったと思う。 あの、男勝りで快活な少女でさえそのことを知っていた。 「ゾロが物知らずなだけよ」 と、笑われていきり立つ少年剣士を宥めて、元気に笑う。 昼間は小遣い稼ぎに山に入る少年達に混じって適当な竹を刈り、村に戻って他の少女らが折り紙や染めた布で飾り付けするのを横目に、火照った足をたらいの水につけて氷を齧って笑っていた。そう、ゾロの隣で。 他の少女達のように、母の手製の浴衣に袖を通して下駄を鳴らしてはしゃぐより、祭りの準備で道場を貸し、また自身もいそいそと働く父を手伝って駆けずり回るほうが似合いといえば似合いだったのだが。 それでも、物を知らないと笑いながらも「七夕」のお伽話をゾロに聞かせてくれたのもくいなで、 「この日にお願い事をすると、一年で一番幸せな時を過ごす織姫様と彦星様が、地上の願い事を掬い上げて、天の河に流して叶えてくれるんだって」 「へえ」 「まあ、ゾロがそういうことに興味を持つとは思ってなかったけど」 くすりと笑われて、仏頂面でゾロは言った。 「他の奴に願いをかなえてもらっても、意味ねえし」 「―――そうだね」 ほら、今も村の少女達は頬を染めて、一番大きな笹のひと房を手に取り―――自分の髪飾りの紐をといて、熱心に願い事を書き記した紙を結んでいる。 それを否定するでもなく、また同調するでもなく、くいなはしばらく眺めて、息を吐いた。 「でも、たなばた、好きだなー」 どこか舌足らずな風に言う、年上の「ライバル」を不思議そうに見て、ゾロはわけがわからないと首を振る。 「…祭りは楽しいだろうけど、くいなは今年もどうせ手伝いで遊びに行けないんだろ?」 「ゾロも手伝ってくれるんでしょ?」 「…誰も手伝うなんて言ってねえぞ。勝手に決めるな!」 「手伝ってくれるんでしょ?」 「―――何なんだよ…」 ほとほとに困り果ててゾロが肩を落とすと、くいなはにっこり微笑った。 「ほ〜らね! ゾロ、意外に押しに弱いんだもの」 「俺は弱くねえ!」 「そういうんじゃないってばあ」 本当は、 本当は眠らなくていいのにね、とまるでゾロを芯から見透かしたように笑った彼女は、そう、的を射ていたのだろう。 確かにゾロは子供の頃から眠るのが好きだった。良く食べ、良く眠り、遊び回り、鍛錬にいそしむ。 剣術を習いたての頃は、無理に身体を作ろうとして「そんなんじゃあたしに勝てないよ」と笑われた。 今思えば、子供のうちに作る筋力などはすぐに衰えてしまうのだから、強制して作ったら身体が壊れてしまうのだと―――理解できる。だが、当時の負けん気の強かった自分が素直にそう促されて従ったかといえば、否、だ。くいなは本当にゾロのことをようく見て、理解していた。 修行が楽しくて、寝る時間も惜しんだ。遊び、駆けずり回って、自然に足が早くなって、山登りも得意になって、川で泳ぐのも上手くなって、爆睡するのは夜だけでよかった。 早朝、訓練場にくいなと一緒に走って向かった。寝ていたゾロも、くいなの「起きろー!」の声にすぐさま飛び起きた。つまり、ゾロは睡眠に固執するわけでもなかった。 昼間寝る習性がついたのは、彼女が死んだ後の話。海賊狩りになって、必要に迫られてのことだ。 多少名の知れた山賊やら海賊を討てば、敵討ちの追手がくる。山に逃げれば獣もいる。どうせ昼間は獣は寝ているのだし、少しでも安全な夜に道を進めばいい。熊や虎を恐れるというわけではなかったが、無駄な殺生をしても仕方がない。ゾロはそれらを撃ち、食らう狩人ではないのだ。 夜行性の動物と同じく、人間も圧倒的に夜襲が多い。闇討ちという言葉の通り、夜に紛れてゾロの首を撥ねようと現れる。 海賊狩りの時間が何時の間にか馴染んだ。早起きだった子供はとうにいなくなり、昼に睡眠をむさぼり、夜に敵襲に供えて刀を鳴らす男しかいなくなった。 (今は船の上なのにな) 勿論昼間に襲撃がないとも限らない。いくら深い眠りに落ちていても、殺気を肌で感じればすぐさま覚醒できるようになったのも剣士の性質と言えるだろう。 昼間も夜も存分に眠れるようになった。でも、本当は昼間少しでも睡眠が取れたのなら夜は寝なくてもいい。眠れるときに「眠り溜め」をする、冬眠前の獣のようなことをしている。 だから―――眠らなくても、いい。 …彼女だけが、知っていた。 彼女は、知っていた。それが事実。そして、永遠に変わりようのない、真実。 *** 食事を終えた瞬間、声もなく、微動だにせず泣き出したゾロを、仲間達は一瞬茫然と見つめた。 「―――ぞ…ゾロ?」 おそるおそる、といった風に…それでも心配りの上手なウソップが顔を白黒させて、 「どうした? な、なんかあったのかよ?」 「…何でもねえって言っただろ」 能面のまま口角の端をほんの少しだけ歪ませたゾロは、いつものように皮肉げに笑う。 だけれどもその切れ長の瞳からは次から次へと雫が溢れて頬を容赦なく落ちていく。まるで小さな滝だ。堪えるものも遮るものもなく、ただただ真っ直ぐ落下する。 「―――大丈夫なんだよな?」 「ああ」 しっかり頷くと顎まで伝った雫がぼろりと胸元に落ちた。 ルフィは満足そうに頷いて、 「大丈夫ならいいや!」 とお気に入りの船首に走っていってしまう。 不気味そうに眺めるナミとサンジ、心配そうに見上げてくるチョッパーとビビを見て、ゾロは無表情のまま片手をひらひら振った。 「最初に気にするなっていっただろ。こりゃあ…あー。儀式みてェなもんだ」 「儀式…?」 「ああ」 くいなという少女と、ゾロの。 あるいは自己満足という名の。 儀式、なのだ。 *** 村の真ん中に一本、大きな笹が立てられる。 太い若竹で囲いをつくり、太く組んだ麻紐でしっかと縛り土台を作る。周りには灯篭が灯されて、いつものように季節が来れば村に沿った川のほとりで蛍がそこでも小さな火を灯す。 子ども達は新しく買った生地で着物をこしらえてもらい、その祭りではじめて袖を通す。 笑い声が響く広場には、大人達が腕まくりして櫓を組んで、倉庫から太鼓を引っ張り出してきて。 道場は祭りのために開放されてしまうから、午後の練習は早々にお開きになる。もとより前日あたりから騒がしくなって、道場の隅のほうに順々、荷物が運び込まれるようになるから道場通いの子どもたちは村で誰より一番、祭りの気配を感じることになるのだ。 その年はいつものように、提灯片手に草むらでの鬼ごっこや、川のほとりでの花火に―――男の子に混じって―――参加すると思っていたくいなは現れなかった。 (折角、先生からは遊びに行っていいって言われてたのに) 大人に混じってあくせく働いて祭りを裏から見守っていたくいなも、あの穏やかな道場の師範が笑って「遊びに行っていいんだよ」と云うと、嬉しそうに顔をほころばせていたのに。 「なんで、くいな来ねェんだ?」 昼間は一緒に笹を取りに山に入った。火照った足を水で冷やして、砕いた氷をなめて微笑った。 「ごめん、ごめん」 くいなは笑って下駄を鳴らした。 「着つけてもらってたら遅くなっちゃった。やっぱ、慣れないと変な感じだね」 結局言わないままで終わってしまったけど、ゾロはその時度肝を抜かれて、浴衣着姿のくいなを見て。 「くいな、どうしたんだその恰好」 女みてえじゃねえか、と呟いて思いきり殴られた。 似合ってるなんて言ったら、何だか変な気がしてやめた。 くいながくいななら、それでいいと思った。 だから一生、ゾロは気が利かないままなのだ。 天の川を見ても「星がたくさん」で、それだけだった。 昼間みてえに眩しいなあと思った。それだけだった。 「一年に一回だけしか逢えないんだって」 来年もまた一緒に見ようかなんて、笑うから、 そのときはゾロ、あたしに一勝でもできてるかなあなんて笑うから、 「上等だ! 絶対、絶対勝ってやるからな!」 一年に一度、逢えるのなら充分だろう? だって、逢えるのだから、充分ではないか。 相手が生きて、存在しているのだから、何故それを「切ない」だの「儚い」だの言葉で勝手に括るのだろう。 「逢えるんじゃねえか」 結局翌年、七日。くいなは二度と浴衣の袖を通さなかった。山にも入らなかった。花火もしなかった。 星を見ることも、なかった。 二度と、なかった。 *** 無表情に涙を流すから。それは悲しみ、泣くというより、本当に「ただ溢れる」だけのようで、やがてとめどなく流れ落ちるそれを拭うこともなく、ゾロが平然としているものだから―――仲間達もそれぞれ納得することにしたらしい。 「なんだかよくわからないけど」 ビビとアイスティを飲んで、お茶を楽しんでいたナミは寝転がりながら、鍛錬を続けながらも汗より多く頬を濡らす男を見て、ぽつりといった。 「ゾロは、吐き出すっていうより、なにかを―――受け入れてるみたいね」 「そうですね」 ビビは頷く。 「惜しんでるようには、見えないんです。哀惜じゃない…。Mr.ブシドーは、何を見ているのかしら…」 「ていうか、不気味ですよね」 お茶請けを持って現れたサンジはにっこりしながら、 「今日のデザートはナミさんよりいただいた蜜柑とグレープフルーツのシャーベットでございます」 「まあ、素敵」 「いただくわ。ありがと、サンジ君」 「いえいえ」 にこやかに笑って、コックは綺麗に一礼する。 「まあ、でかい図体で無表情に泣かれると、こっちとしてもどうしたらいいかわからなくなるけど」 スプーンを噛んで、先ほどのサンジの言葉にナミが答える。 「でもからかうわけにもいかないでしょ。あんな涼しい顔して泣かれると。…口だし、出来ないじゃない」 飽きれたことに、ゾロは今もなお泣き続けている。 このぶんだと体中の水分が枯れ果てるまで―――あるいは、彼が「儀式」を終えるまで、涙は止まらないのだろう。 しかし何10キロあるんだか、得体の知れない重りを振り回す横顔は鍛錬に集中しているように思える。暑苦しいことこのうえないいつもの状況の中で、頬に光るそれだけが違って。 違和感を克服したのはルフィくらいのもので、全く関係ないように自然に話しかけ、じゃれついて追い払われている。ルフィの麦藁帽子にしがみつくようにして、頭の上にいるチョッパーは丁度ゾロと同じ視線くらいになるらしく、どうしたらいいかわからないような、複雑な表情をしていた。 先ほどより鍛錬の邪魔をしながら何か熱心にゾロに話しかけてるルフィは、おそらく「遊ぼう」と誘っているのだろう。そのうちウソップが「発明」を切り上げて甲板に出てくる。年下三人にじゃれつかれて、とうとうゾロは諦めて重りをおろした。その様子を見ていた優雅なティータイムチームは、密やかに笑みを噛み殺す。 それでも、苦笑いしながらゾロは、時折目を伏せる。 ゆっくりと、咀嚼するように、目を伏せて息をする。 それが祈りの行為なのか、何かを願っているのか、仲間達に知る術はなかった。 ただ、ゾロは、とても静かだった。 「終わったのか?」 「ああ」 夕飯になってようやく、ゾロの涙はとまった。滅多に泣かない男の涙の痕は、妙に赤く残ってしまいルフィはそれを見て「赤いパンダみてえだ!」と笑ってゾロに殴られた。 「今日、何の日なの?」 さり気なく(あるいは思い切って)ナミが首を傾げると、ゾロは少し考えるようにして、 「七夕だ」 「タナバタ?」 「あーッ!そうか、七夕!」 「ルフィさん、知ってるの?」 ビビの問いかけに、ルフィは頷く。 「紙をつるして願い事が叶って、うまいもんいっぱい食える日だ」 「わけわかんねえよ」 サンジの冷静なツッコミに、詳しい説明を求められていると理解したゾロが補足する。 「ルフィんとこと、俺の住んでたとこが同じかどうかは知らないが、毎年この時期、この日は笹を立てて紙に願い事書いてつるしゃあ、願いが叶うっていう…まあ、祭りみてえな行事があるってことだ」 「うめえもんいっぱい食えるんだ〜!」 幸せそうに言う船長の言葉はとりあえず無視して、チョッパーがおずおず、口を開く。 「俺もちょっと知ってる。本で読んだだけだけど、夜空の星にそれぞれ住んでるお姫様と、その大事なひとが、一年に一回逢える日なんだ」 「―――ってことは」 ウソップがフォークを落としかけて、慌てて拾う。 「…ロマンティックな行事ってことか?」 「ぶっ。そんなロマンティックなお話を思い出して、てめえは泣いてたのかあ?」 思わず爆笑したサンジを、アホらしいとばかりにゾロは見て、肩を竦めた。 「どうでもいいけどな。別に七夕自体に興味はねえ。 命日なだけだ」 ばか、ゾロ。気が利かないんだから。 ―――また、くいなに怒られてしまいそうなことを口走った気がする。 (やべえ) 顔をしかめて、ゾロは手を振った。 「だから―――何度も言うが、気にするなっつったろ。俺も今朝まで忘れてた」 命日というのは不思議なもので。 毎日毎日、彼女のことを―――過去に思いを馳せているわけにはいかない。薄情といわれようと、それが現実だ。 けれどその日だけは――忘れてしまった時があり、日があったとしても思い出せる。思い出して、懐かしむ。 (なら遠慮する必要はねえよな) 彼女はいない。それをもう、受け入れている自分がいる。 彼女はいない。それはもう、真実だと理解し今がある。 ただ、彼女と見た天の川だとか、 勝負に勝てなかったあの日だとか、 前日の悔し涙の行方だとか、 彼女が、女であることにコンプレックスを抱いていたことだとか、 散々思い出して、あと幾日あればと悔やんで、悔やむほどに何も出来なかった自分に飽きれた。 くいなは自分の夢と共に逝ってしまった。 叶うことのない彼女の願い。(世界一強い剣士になるの) 敵うことのない自分の誓い。(いつかくいなに勝ってやる) (違うんだよ、ゾロ) また、くいなは明るい声で笑うんだろうか。 (嬉しいんだよ。懐かしんでくれて、思い出してくれて。嬉しいんだよ) てのひらには、彼女と誓った星が眠る。 ぐっと開いて、また閉じて。今日が終わればゾロの中のくいなはもう一度眠りにつく。 死者を悼む儀式の中に、灯篭流しがあったことを思い出す。 「ここはでっけえ川だと思えばいいよな」 今日の海は、天の川を反射して、恐ろしく美しく輝く、巨大な海だ。 「―――じゃあな」 海に向かって片方のてのひらを広げて、 見えない星が、落ちていく。 「おやすみ」 二度と逢えない眠り星。 「くいな」 終わってしまった永別と共に、 七日、もうこの日には涙を流すことはないのだろうとなんとなしにゾロは思った。 ひとつ、くしゃみが出た。 くいなが笑った気がした。 |
■ゾロ×くいなってわけでもなく。 ■七夕のお話し。本当はくいなちゃんが亡くなった時期ちゃんと知らないのですが、勝手にそうしちゃいました。すいません。 ■ずっと書きたくて、でものんびり書いてるうちにどんどん結果が変わっていってしまったような。(むしろ最初考えてた内容忘れてしまった) ■親友を、懐かしみ、彼女の存在と、いない事実を受け入れる涙。 ■そういうお話です。 02/07/07 |
思い立ってダウンロードフリーにしました。 御自由にどうぞ。 |
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