Presented by Yoshimi_utufushi Her homepase is here.

マスコット的。

「ゾロ…あのな、ちょっと相談があるンだ…」
 ひかえめにオドオドと声をかけてきたのは、船医のチョッパーだった。
 いつものとおりに甲板でごろりと横になっていたゾロに、密かな声で語りかけてくる。
「あ?相談?――まあいいが、たいしたことはできねぇぞ」
 目をこすりながらむっくりと上体を起こして、チョッパーの視線と合うようにそのままの体制になった。
「じつは…」

 ちょっとゾロはいやな予感が過った。

「この間、サンジが―――」

 ガタッ

 真っ青になったゾロの身体が傾いで、スグ側にあった樽に頭をぶつけた音。
「!?ゾロ?――ゾロ?頭、大丈夫か?」
 なんとなく憐れな感じの声で、チョッパーが青くなったゾロに手を伸ばす。
 するとゾロは、いい、と手に平を前に出してなんとか樽から身体を起こした。
 更に顔色の悪くなった顔の眉間におもいっきり皺を寄せて腕組をした。
「…ゾロ…どうしても一緒に考えて欲しいんだ。ゾロじゃないとダメなんだよ…ごめん…」
「―――おめえの、せいじゃねぇよ」
 ぼそりとつぶやくゾロに、上目使いで首を傾げるチョッパーは、悩んだ。
 相談しにきたのに、今それをしていいのか悩んでいるのである。

 じっさい、今のチョッパーの行動はかわいいと言える。
 ちっこい顔で大きな目をしてこう…首を傾げる仕草など、十人中九人はかわいいと言うに違いないだろう(あと一人は恐らく動物嫌い)。
「オレ…どうしたらいいのかわかんなくて。アレからずっとサンジがオレに付き纏って…いや、後をつけて…いや…。ええと、とにかく…ちょっと心休まる時がないんだ。それでサンジにどうしてオレをつけまわすんだ?って、勇気をふりしぼって聞いてみたんだ」
(聞いたのか…)
 ゾロはチョッパーをかなり尊敬した。自分だったらそうそう簡単に聞くことはできなかったろう、きっと…聞く前に斬り刻んでいたかもしれない、と。
 それほどチョッパーの心の疲労はひどかったのだと言うことを、ゾロは思いもしなかった。
「――そしたら…ゾロがぜひオレにマスコット的かわいさを教われって言ってたって聞かされた。ゾロ…サンジに何を言ったんだ?」

 ごす…

 再びゾロの頭が樽にぶつかった。
「ゾロ―――!!ゴメン!オレが、オレが考えナシだったよ!!や、やっぱりオレ…」
 泣きながら後ずさりして行こうとするチョッパーに手を伸ばして、ひきとめたゾロの顔は鬼神だった。
 凶悪すぎていっそ頼もしいというか。
「待て。―――おまえが苦しむこたねぇ…オレが…死ぬ覚悟でヤツをやめさせてやる…ッ!!」

 どどーん

 動機はどうあれ、背後に文字がでてもおかしくないような場面であった。






 一方サンジ。
 これについてはあんまり説明のしようがないというか…。
 一言ですむ。

 相変わらずおかしかった。

 普段はいつも通りの頼れるコックさんなのだが…事ゾロが絡むとおかしくなる。
 まあそれもつい最近勃発したことなのだけれども。

「ごっはーんvごっはーんvvナーミさんとーぉビビちゃーんと〜ぉ、ついでにヤローどもにィvあと愛しの〜vゾ・ロvのため〜!」

 …一部お見苦しい点があったことをお詫びいたします。

 海の最強コックは、キッチンにてそりゃもう盛大な鼻歌(それはもう鼻歌とは呼べない)を歌いながら食事を作っていた。
 その手さばきはやはりさすがというか、自ら言うだけあってかなり素晴らしいと思う。
 なんて言ったって素早い。
 顔は無意味に不気味な笑みを作っているが、それ以外はまごつくことなく次々と品数の多いメニューをこなして行く。
 盛りつけも素晴らしい。
 どうせスグに大食らいの船長に食い荒らされると言うのに…。

「刃物〜のあつかいは〜vオレも負けねぇ〜ぞ〜ン!」
 華麗な包丁さばきと、その歌の気持ち悪さのギャップも素晴らしく…なんかもうキッチンはある意味地獄と化していた。
「―――ぜってぇ、オレを認めさせてやる…!」
 包丁かまえてなにやらマジな顔を見せているが、その真の意味を知れば誰もがトーンダウンすること必至である。

「オレがかわいいって言わせてやる!!」







「―――――…やっぱ逃げてェ…」
 そうキッチンの入り口でつぶやいたのは、先ほどチョッパーと人生賭けた「約束」をしていたゾロだった。
 悩んでいたチョッパーの代わりにゾロが思わず言ってしまったことなのだ。
 しかし、しかしである。
 ここまで来てあのセリフを聞いてしまったゾロは、かなり戦意喪失してしまった。
(やべぇだろ…ありゃぁ…)
 誰にも言えないが、こう…足がちょっと震えてきてたりして。
(できればこのままいなくなっちまえば楽なんだけどなぁ…)
 それもできない相談だ。
 第一船長が許さないだろうし。サンジも絶対に降りないだろう。

(―――それで、オレはどうしたらいいんだ…?)

 はたと気付くと、なにも対策など立てていない。チョッパーに言った勢いでここまで来てしまった、悪魔の巣へ。
 ゾロはそっと扉を少しだけ開けて中をみた瞬間、後悔した。
 中で楽しげに鼻歌を歌いながら(しかもそれは先ほども記した通り、鼻歌ではないし歌の内容も気持ち悪い)
 楽しげにステップを踏んでいたサンジをまともに見てしまった。
「――……げ…」

 思わずうめいてしまうほどその光景は恐ろしいものだった。
 確かにあの歌もステップも恐ろしいことにはかわりない。
 しかしそれくらいならもしかしたらちょっとは耐えられたかもしれない。
―――ピンクのエプロンと頭上の白いかぶり物(?)がなければ。

「…何のつもりだ…アイツ…」
 ギリリ、と歯をならして廊下の板を見つめる。
 そしてチョッパーの顔と言葉を思い出す。
(ああ…そうだ…約束したんだった)
 サンジの凶行をやめさせると。
 そのかわり、ゾロの命は風前の灯(それは言い過ぎ)

 ぐっと下唇を噛み締めて、拳を握るとゾロは意を決したようにキッチンの扉に向き合った。
 そして地獄の釜にも思えるそれを思いきって開けた。






「サンちゃんはね〜サンジっていうんだ〜ほんとっはねっ♪」
 使い終わった調理道具をざばざばと洗いつづける。
「だっけど♪かわいいかっら♪自分のこっと♪ サンちゃんってよーぶんだよ♪ かわいいね!サンちゃん♪」
 水洗いをしてそれを水切りに置きつつ
「サンちゃんがね、遠くへ行っちゃうってほんとっかな♪―――いかねぇよ!!(がっしゃーん!)」

 盛大に叩きつけた金属の皿が、蒼白になったゾロの足元まで転がってくる。
 サンジがその皿を追いかけようと、ふとこっちをみた。

「ゾロ〜〜〜〜vv」
「!」

 オクターブが一個上いっちゃった声で愛しの君の名前を呼んじゃったサンジをみて、ゾロは血の気が引く音を首の後に聞いた。
「なんだよ、まだ食事の時間じゃねぇぞ?――あ、わかったぁvオレに会いに来たんだな?てめぇ、オレのエプロン姿見に来たんだよな!!」
 うへへへへとか変な笑い方で、手に持っていたオタマでゾロの頭をごすごす叩きだした。
「―――」
「オレも苦労したんだぞ!ナミさんに色はどんなのがいいかとか、ビビちゃんにもどんなのがいいかとか聞いてさぁ。チョッパーの観察して勉強したんだけどよ、アレだな、オレにあのツノはちょっとムリが…」
「――おい」
 嬉しそうに語りつづけているサンジに必至で割りこんで声をかける。
「なんだ?リクエストか?」
(なんのだッ!!)
 心の中でツッコミ、息を整える。
「あのな…その…」
「それともネコちゃんの方がよかったか?」
「聞けよ!!」
 ぶちっと血管の切れる音がしそうにゾロが怒鳴った。
 確かにゾロが怒鳴りたくなるのもわかる。
 サンジが話を聞いていないこともキレる原因だと思われるが、第一の原因はやっぱりそのいでたちだろう。

 ピンクのエプロン
 片手におたま
 頭にはうさぎの顔つきみみ帽子。
 そして極めつけ ケツに真ん丸いうさしっぽ

 そこで卒倒しなかったゾロはえらいと思う。

「っつーか…そ、そのカッコやめろ!!」
「え―――!なんでだよ?可愛いだろ?オレかわいいだろ?」
 そしてくるりと一周。
 誰だってそんな格好した男はいやだろう、とゾロは思った。
「あのなぁ…何度も言うようだがオレは――」
「ああんvその先は言わないでいい!!わかってるさ!」
 おそらく女の子がそれをすれば可愛いことこの上ないだろう「もじもじ」をやり出した。
「−お―――オレが可愛すぎて他人がオレにほれちゃうかもしれないからやめろってことなんだろ?大丈夫だぜ!オレァおまえ以外に心は許さん!!――もちろんカラダもな★ いやんv何言ってんだオレァ!!」
 と、一人で大盛りあがりして、ゾロの足に蹴りをいれて勝手にテレまくっている。
「――――――」
「ゾロったら★そんなことは最初からお見通しだゾ!」
 ゾロは全身脱力した。
 盛りあがったサンジには、もう何を言っても通じない。
 だがしかし、ここで引き下がったらこの先とんでもない事が起こりそうでいやだった。

「あー…あのよ――」
「あ?なんだよ、だーぁりん?」
 ゾロはそこでも耐えた。耐え切った。――顔色は最悪だが。
「…お、おう。その…チョッパーを…追い掛け回すのは――やめとけ?」
 約束した、その部分だけは言えた。
 あとは、ヤツの行動に耐えられるかどうか…ゾロは頭脳を高速回転させた。
「なんで?」
 いきなり言われたからか、サンジはぽかんと口を開けている。そのアホさ加減はそれだけで倍増した。
「とにかく、やめとけ。チョッパーが怯えている」
「―――なんで?」

 理解してない。
 っていうか、むしろどうして怯えているのか分かっていないのだろう。
 ゾロは頭を抱えた。
(どうしてヤツはああまでしてアホなんだろう…いや、アレはもう病だ。病気だ!!――だからといって怯えきっているチョッパーに診せるなんてできねぇし…)

「オレはチョッパーに教わってんだぞ?あの『マスコット的可愛さ』をマスターするためにがんばってるんだ!それをたとえてめぇでも阻止する事は断じてゆるさん!」
 ビシ!っとオタマでゾロを指して妙に決まってるポーズをとった。
「だから、どうしてそんなもん教わらなきゃいけねぇんだよ!」
「てめぇがオレのプリティさに不満たらたらだったからだろ!」
 どっちもキレかかり、キッチンには殺気が充満。光景はサンジのお蔭でかなりアホっぽいが。
「――かわいくないからかわいくないって言ったまでだ…」
「今は違うだろ!かわいく変身したんだからな!!――遠慮はいらん、思う存分かわいいと言いやがれvv」
「いわねぇよ!!」
「ンだとォ?コラァ!!」

 うさみみとはらまきが激突した。






 キッチンから壮絶な音が聞こえてきた。
 扉から少し離れた廊下に、チョッパーが怯えて貼りついているのを、これまたその少し先でびくびくしながら騒ぎを見にきたウソップに発見される。
 急いでチョッパーを甲板まで引きずり上げたウソップは、何故チョッパーが泣いているのか分からずにいた。
「どうしたんだ?――喧嘩の音が怖かったか?」
「―――うっうっ…ウソップ…アレはあの喧嘩は…オレのせいなんだ…」
 イマイチ状況が分からないウソップと、いつまでも怯えて泣いているチョッパーは、ナミが怒涛の仲裁に入るまでそのまま甲板に避難していたという。

 ちなみにルフィは――――船首でまったりとしていた。
「ん――――!良い天気だ!!」






「次は絶対ェかわいいって言わせてやるッ!!」

「死んでも思わねぇ…!!」



 チョッパーの安息の日々はいつ帰ってくるのだろうか。
 あとゾロが安心して過ごせる日々は――――。


 神様が分からない事があっても不思議ではないのだ。


――――たぶん。

 

 

END

☆前回のお話の続きです。
ええ、乙女失敗の。

ウチのサンジさんは、もうホントに頭の病気じゃないかと思うんですが…。どうでしょうか。
頭弱いよね?っつうかすでに変態の域だよね?
ああ…かわいいサンジさんがかきたい…<え

☆こちらはシキさんのサイト「198Yenビルヂング」様に押しつけた差し上げたモノの続きです。
これもシキさんへ強制送信(笑)しますので、受け取ってねvドジさんvv

■もらっちゃったv
■もらっちゃったあ〜vvv
■うへへへ。返品はききませんぜ旦那!
■というわけでうつふし誼さんを…脅迫した甲斐があったぜ!な乙女失敗第弐段。すこんとゲットだっぜ〜!(踊)
■だんだん可哀想→不憫→どうしようもねえ!→かわいい?な構図になってきてシキヲはえらい満足しております。うひぇひぇひぇはははへへへへ!(笑い声?)

■誼ちゃんありがとう!!また書けよ!コノー!(脅迫)

02/07/02

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