■赤目の涙■ |
渇いた土と、 澱んだ水を、 併せて 捏ねて 歪に捩る 泥人形 病んだ石と、 朽ちた樹を、 重ねて 積んで 竈にくべる 木偶人形 にんぎょう 精密でない 完璧でない ヒトガタ ■■■ 「えー。イヤですよ。子どもの面倒なんか。」 三代目火影を前に、堂々と文句を垂れることが出来る男―――はたけカカシの即答ないし拒絶に、火影は深々と溜息をついた。 (わかってはおったんじゃが。) ここまでしらじらと「厭」を言われれば、下手をすると予定が百八十度狂うことになるではないか。 「あのですねー、三代目。 俺疲れてるんですよね。任務終わったばっかりで。」 これっぽっちも疲れていない表情でのたまう覆面の男に対し、火影は更に肩を落として溜息をつく。 今回の高位ランクの任務―――暗部に指令させた隠密性の高い任務の司令格として、余裕の様子でこなしてきたと報告は受けてある。他の暗部連中らといえば『身体の一部分が欠けてしまう』ほどの結果もありながら、この男ときたら怪我人をフォローしつつ、軽度の怪我も負わずに任務を片付けてしまった。 『最初からカカシ上忍が出ていれば―――全員無傷で帰ってこれましたよ。』 任務報告者が皮肉のように言った言葉を振り返れば否応にも、目の前の忍びの力量が覗えるというわけだ。 「その面倒ごとに近づかん性質は便利じゃの。」 「あ、どうも。」 褒めてないのにぺこんと頭を下げる、上忍の中身は果てしなくブラックホールである。 「まあ、これに眼を通すだけでもせんか。」 ついと飛ばした書類をのろのろと受け取ったカカシは、ありゃあ、と間の抜けた声をあげた。 「うわー。うちは一族ですか。」 因縁という言葉があるが、それをふと―――額当てで隠したほうの、瞼の裏側に思い浮かべる。 じわりとした痛みが広がった気がして、カカシは軽く頭を振った。 「うちはの末裔に、女の子が一人に―――。」 書類をめくる指が止まった。 「…知っておろう。うずまきナルトじゃ。」 決定的な毒を含んで、ゆっくりと言った火影にカカシは曖昧に笑う。 「はー。 何年ぶりですかねえ。」 頬を掻くしぐさをするカカシを見つめたまま、火影は続けた。 「もう、十二になる。あれからな。」 「十二歳ですか。大きくなるもんですね。」 全く興味なさそうに、なあなあに返事を返す彼の心境を―――そのまま受け取るほど火影は優しくない。 「…教師に向く向かぬはこの際良い。 ―――とりあえず、ナルトの家にでも行くかの?」 「はあ。」 やる気のない声が返るが、『断る』の言葉はない。 『断れない』現実もあろう。しかし眠たげなカカシの片目は今だ書類に落ちたままだ。 右手が鎖骨のあたりに伸び、引っ掻く仕草で服の中にある認識票をなぞる。 銀の鎖に絡んだ『識別認識票』のプレートが一人分きりでないことぐらい、目の前の忍びのボスは知ってるんだろうなあ。 無言でしらじらと放たれた圧迫感と、強制に、今度はカカシがため息をついた。 「数年前はムリヤリ引き離されちゃったのに、なんで今更、ねえ。」 プレート同士がぶつかりあって、鈍く、鳴った。 ■■■ 「何でか知らないんだけど、俺、暗部休業することになったから。」 背中を丸めて蕎麦を啜っていたカカシにみたらしアンコと猿飛アスマが揃いも揃って茶を吹いた。 「汚いよ〜?」 「だって、アンタ!何!?味方も敵もジェノサイド、がキャッチコピーのアンタが!?」 「なんだ、とうとう身を固める決心でもしたか!」 どうやら本気で言っているらしいアンコと、途端爆笑したアスマに、 (こいつらに言ったの間違いだったかも。) と遅かりし後悔のカカシである。 「んー。火影様がねえ。俺の試験は並大抵の子じゃあ泣き出しますよ〜って言ってんのに、また。」 「ああ、下忍の担当教師か。」 アスマが納得したように頷くが、今だ目元が笑いをこらえている。 コピー忍者のカカシが身を固めると想像しただけでもオカシイが、子供相手にまじめくさって先生をやるカカシ、というのも笑い話にしかならない。 「アスマとかはエライね。ちゃんと子どもの相手しててさ。」 「イヤミかよ。」 渋い顔でうめいた同僚に、一応落ち付いたらしいアンコがうめく。 「ダメ。面白過ぎる。女泣かせのカカシが!男殺しのカカシが!! 『暗部伝説の男』とまで言われたブラックリスト常習犯が―――ッ! …先生だなんて………ぐふっ。」 「男殺しってナニ…」 笑い転げる連中に溜息を零して、アンコには「イビキとか…暗部連中にはテキトーに伝えておいてね。」と言い渡す。 火影の命令なんだから、仕方がないでしょ。 蕎麦の汁をずず〜と啜ったカカシに、アンコが低い声でつぶやく。 「で。なんでアンタは覆面つけたまま食うの。」 「これも修行ですから。」 「幻術使ってまで顔隠すなんて、よっぽど恥ずかしい素顔してるってワケね!」 「見せてもいいけど〜。」 眠たげな眼のままカカシが言った。 「見て、絶対に、後悔しないって言うんだったら。」 「あ、やめとく。」 「さ〜て、シゴトに戻らねェとなあ。」 早々に立ちあがったアンコと、カカシの持つ書類に類似したそれを持って退散したアスマに置き去りにされた『暗部伝説の男』は切なげにお碗の底を箸でつついた。 ■■■ 九尾狐の暴走は、瞼の裏側にしっかと焼きついて離れない。 そう、今も覚えている。どれほど時が経とうとも、身体が老い、朽ち果てるその時まで―――まるで昨日のことのように鮮やかに思い出すに違いない。 人の泣き叫ぶ声、悲鳴と絶叫。断末魔。 家族を、恋人を、友人を、仲間を護る為に死ぬ覚悟で挑んでいった忍びのものたち。 九尾の咆哮に聴覚を失い、カカシの「逃げろ」という叫びが届かぬまま―――ぽきりと折れるようになぎ倒されて死んだ、親友。 『…、カ―――シ。』 数日前、彼はなんと言っていただろうか。ああ、そうだ。照れくさそうに笑って、好きな女ができたといったんだ。まずお前に話しておきたくて。…何故?と問うと少し機嫌が悪くなって、お前を親友だと思っているからだ。悪いか!と怒鳴られた。 きょとんとしているカカシに、もう一度彼は言った。 『なんだよカカシ、変な顔!』 がははと歯を剥き出しにしての豪快な笑顔。いつも付けてたトレードマークのゴーグルの中で、眼が楽しそうに笑ってた。 『好きなコができた。』 『―――、カ…』 諦めたような、安らかな頬に影が落ちた。瞼は閉じずに、空洞の瞳が虚空を見上げていて―――カカシは傷だらけの指で、親友の瞼を下ろしてやった。 小さな人間をあざ笑うかのような、吼え猛る九尾。次々と食われていった同僚達。 「いきなさい―――カカシ。」 いっつも笑ってるよな眼が柔らかに揺らいでいた。策が見つかったよ、と小さく言って、 「…あの子を、頼む。」 「…厭ですよ。子どもの面倒なんか。」 三代目の前でのうのうと言った言葉を、再度紡ぐ―――淡々と。 「泣くし、うるさいし、汚いし、弱々しくって、夢見がちで。 だいたい木の葉の甘ったるい空気は、俺たち暗部に属していた忍びには結構痛いんデスヨ?」 感情を殺して忍びとなれ。その教えも空しい九尾へのあからさまな憎悪。 死んでもなお苦しめられる殉職者達の墓標。怨詛だけはしっかと腹に覚えて、平和ボケした木の葉の人々。増えるくだらない程度の低い任務に、ほんのごく僅かで繰り広げられる水面下での、腹の探り合い。 疲れる。もともとそんな細やかな神経を持ち合わせているわけではないが―――胃壁を削られるような、喉を圧迫されるような不快感がついてまわって、鼻の利くカカシにとって濃度の高いふやけた匂いは奇妙なほど疲労するのだ。 「恋に夢中の女の子に、兄殺しを己に穿ったうちはの子、それに…火影を望む里の忌み子。」 なんで可愛らしくて脆弱な、赦しがたいほど自己の、エゴのかたまり。 自分をアピールできるなんて、なんて無邪気な子どもの特権。 そんなに無垢に、残酷にいられるのは小さな子どものうちだけなのに、急ぎ足で大人の、それも枷を両腕につけるような忍びの道を選ぶ…それを少しだけ、切なく思う。 否、切なく思うふりをする。感慨深い風に思いを噛み締めれば、少しは人並みに感情が動いている気になれる。 可愛くて可愛くて憎たらしい子ども達の導き手なんて、 (向いてないんですヨ。) カカシは己を木偶とする。 干乾びた土と、石と、樹の皮と、藁を混ぜて作られた出来の悪い人形のようなものなのだ。 「アナタが死んだ時も―――どんなに近しい人間が死んだところで、俺は涙も出せなかった。 センセイ、あなたは頭っから九尾に食われて。アイツはぽきりと真っ二つに折れた。たくさん死んだ。」 カカシは己を泥で塗る。 醜悪かつ滑稽な、烏につつかれ田にぽつり。 「あったかい匂いのする子どもに触れたら、子どもが死んじゃうかもしれないじゃあないですか。」 この手は―――それはそれは恐ろしいほど、たくさん殺めてきたのだから。 『それは違うね。』 幻聴が聞こえて、カカシは微笑んだ。 『見て。先生の手は汚れているか?』 エリート中のエリート。妖魔と天女に気に入られた、と噂されるほどの眩い才能。祝福と恩恵をその身に受けながらすることといったら木の葉の政治や外交、忍びの統率そっちのけで、子ども達に学問や忍びの手ほどき教えたり、田んぼや畑をかけまわり頬を泥でぬらして土に触れる。 力仕事から水仕事までやる家庭的な素朴な手は、あかぎれで擦れていたものの、豆と蛸でごつごつしていたものの、優しく、強い憧れの手。 『カカシの手が汚れてる筈ないってば。』 あなたには敵わないなあ。 『怖れないで。子どもはね、そんなに弱くない。』 ■■■ 夢見はいつも最悪か、それとも夢などみない、のどちらかだったが。 「懐かし。」 覆面を剥いだ頬で微笑んで、恩師の柔らかで明るい口調を思い出す。 「怖れないで―――か。 ふう。俺は、怯えてたのかねえ。」 自分の肩ほどにも届かない、小さな子ども達の九つの眼差しにぶつかることが怖くて? 「うちはサスケ。」 やる気なく素通りした情報が苦も無く引き出され、彼は子どもの名を呼ぶ。 「春野サクラ。」 千以上の術をコピーした、写輪眼のカカシという通り名は、何も誇張ではない。 一度目を通したものならば、それが有機物であろうと無機物であろうと、おそろしく複雑な記憶の棚に丁寧に保管される。それを引き出すことさえ、呼吸するのと同じ程度だ。 「うずまき―――ナルト。」 可笑しな事だが、随分前からナルトのことは知っている。 相手側は完全に(と、言い切れる)――記憶していないだろうが、カカシとナルトは旧知といってもいいだろう。彼が生まれた時も、妖狐を腹に封じた時も…おぼつかない足取りで、舌足らずな口で、やっと物心ついた頃も―――知っている。知って、いた。 「ぷ。」 書類に添付されたナルトの写真を見て、思わず吹き出す。 「なに、このカオ。」 一番新しいのがこの写真だと…渡されたのはいいものの、カブキを思わせる顔のペイント。更には精一杯唇を突き出している、カメラ目線の少年がどうにもオカシイ。 「―――そうだね。おっきくなったんだよね。」 (近づくことを禁ずるだとか…鼻が利くから監視しろだとか―――。 三代目にケチつけるのもなんだけど、いい加減だなあ。) いや、つねづね腹の中では文句タラタラでございますが。 「大きくなったんだね。」 センセイなんか御免と思っていたのに、口が呟くのは子どもの成長をしみじみ思う、お父さんみたいなもの。 「ああ…そうか。俺は今。」 父。 もうあの黄色い子を抱き締めることのできない、 あの人を模写した。 「俺が、父親?」 可笑しくて、可笑しくて。薄ら笑いが崩れ落ちる。 それは、無理な話。 「ヤーダ、ヤダ。年寄り臭いったら。」 もう二度と抱き締めることの出来ないあのひとのかわりに、おんぶに抱っこ。髪の毛をぐしゃぐしゃ撫でてやろか。 せめてあの子が捻くれた子どもでないように今は願う。ひたすらに思う。 大事なことも分らない子どもなら、手を離して捨ててしまおうか。 「怖いですねえ、先生。」 子どもはひたすら怖い。温かなぬくもり求めて手を伸ばして、無邪気に笑うから性質が悪い。 自分らのほうが体温の高いことも知らない無知さが怖い。 (壊れちゃいそう。) …壊してしまいそう。 十二年前、死にかけたのはカカシも例外ではなかった。…はずだ。 心臓上を貫かれて出血が止まらないのにも関わらず―――生き延びた。友人が死に絶え、恩師が最後、命を持って全力の術を組む際、盾となって散るはずだった躯は、今、深い傷跡を残してもなお息をしている。 「お前には負けないぞ!」 当時よりカカシをライバル視してやまず、しつこかったガイが感嘆するのは。 「カカシは強いねえ。」 吃驚したように目を見張り、教え子の戦闘センスに微笑んだ恩師は。 生まれた時より嗅ぎ続けた血臭。自らに穿った左目の、赤いイシ。 ああ、愛してしまおうか。 己の愛情は屈折していると我ながら思うカカシが、それでも考えてしまうのは。 ああ、本当に愛してしまおうか。 抱き寄せもせず、突き放しもせず、淡々と愛を注いでやろう。 それで自分のもとから彼らが巣立つ時、少しでも自身に淋しいという感情が沸き起これば、それでいい。少なくとも鳥に突付かれ、始終笑顔で磔された藁と木屑の道化より、優しさも温もりも捨てた完全な戦闘兵器より、生暖かな血肉のぬくもりを感じられるはず。 ヒトであることを、そうして、ようやく確かめられる。 ―――安堵できるさ、心から。それまで心から感嘆するなどなかったから、はじめてホッとできるんだろ。 思い立てば、きりがなくなるほど血が沸騰してどうしようもなかった。 血すら凍ってると囁かれるように、噂に忠実であったはずのカカシの血液だって、心臓ががんがん活動して脈を打つ。 流れ出した体液が内側から外側に押し流れようとする働きに、カカシは小さくうめいた。 「―――愛しちゃうよ?」 それは瞼の裏側までに達する。 ああ、 それを、その役にも立たない無駄な水分の流血を。 ひとは涙というのでしょうか。 ■■■ カカシを良く知る同僚には笑われ、 カカシと共に任務をこなした連中は思いきり顔を引きつらせた。 その傾向はごく一部にではあったが―――起こったもので、 例えばカカシが下忍選抜試験を行い(過去カカシのその試験をクリアした受講者はいない)合格者が出てしまったとか。 Aランクの任務を連続で、休みなく、当たり前のようにこなしていた上忍がおこぼれ程度のDランクで修行をつむ少年少女らに、のほほんと付き添っていたりとか。 はたまたラーメン屋だの、和菓子屋だので子ども等にねだられて財布を空にして、背中に哀愁をただよわせていたりとか。 いそいそと、落ち付かない様子で神社に参拝に向かう姿を目撃されたりとか。 だってしょうがないじゃない? 実は父性愛豊かな忍者だった、とか、少年少女愛好のケがあるだとか、はたまた火影様に弱みを握られてついに問題児が問題児を見るハメになっただとか――― さすが忍びの里。噂は密やかで必要以上に広がるほどではなかったが、まことしやかに囁かれた嘘か真かを問いただす勇気(あるいは無謀)の輩の問いにすら、当の本人は曖昧に目を細めるばかりで応えない。…否、応えるはずもなかったか。 それでも確かに、飄々と、片目だけを見せて色もなく歩くカカシという忍者に転機が訪れたのかもしれない。 「センセ――ッ!」 いっとう元気な黄色の頭がぴょんこぴょんこ跳ねて、元気だねえ、とカカシは思う。 『おっそ―――い!』 少女の声と重なって、変声期前の少年とダブルパンチで遅刻を責められれば、 「うーん。今日はウチの前が洪水で通れなくてな。」 『ハイッ、嘘―――ッ!!!』 ちなみに、昨日も今日も湿り気ひとつない晴天である。 ビシィ、と音を立てて入れられたツッコミにまあまあと曖昧に答えて、カカシが「じゃあ今日の任務を説明ー。」と切り出しかけたその時だった。 「センセ!センセ!」 いつもニシシと笑う子が、楽しげな表情で自分の横にまとわりついた。 「あのさあのさ!!センセ、覆面取ってってば!」 「ナールト。あのねえ。」 「大丈夫!俺、センセーの素顔がどんなにブッチャイクでも好きだってば!」 ぬくもりの恐ろしさに、 ああ、不覚にも総毛立ちそうになる。 これだから厭なのだ。 子どもは容赦なく罪深く、大人の腐敗に気づかずに可愛く笑う。 これだから―――もう、どうしようもない。 抱き締めない。 けれど突き放しもしない。 足をくじいたら、背中ぐらい貸してやろう。 けれど一人で立てるんだったら手を出さない。 「ハイハイ。ま、とりあえず目的地を説明するから、歩くよー。」 「あー!!さり気なく無視した!!」 「もー。黙んなさいってば、ちょっと。」 わしわしと頭を撫でた左手で、小さな子どもの右手を取ればナルトがぎくりとする。 まだ、他人とのそんなシンプルな接触にすらぎこちない子の顔をわざと見ないように前だけ向いて。 「ナルト、子どもみたーい。」 くすくす笑ったサクラの左手に右手を滑りこませて。 「えッ!先生、ちょっとぉ!」 「ハイ、んじゃあナルトはサスケの手を取る〜。」 やる気のない教師の声に、生徒の声が引っくり返った。 「なッ!!!」 「なんでそんなこと!!」 「ダメダメ!サスケくん、よければわたし…ッ。」 「ちゃんと出来たら後でこれ、取ってやろうか?」 顎を逸らして見えない素顔を強調するだけで、一瞬考えをめぐらせた子供たちの顔の、そのおかしさといったら!! 策略とか打算とか、そんなのじゃなく―――好奇心。 ナルトは勿論、サクラだって、サスケだって、うずいた好奇に目の色が変わった。 「ちっ。………おい、ドベ!何緊張してやがるんだ。汗まみれじゃねえか!」 「う、ウルセー!サスケの手が冷た過ぎるんだってばよ!」 「あ〜ん、サスケくん!―――ナルト、アンタずるいわ…!!」 「ははは。」 「先生、笑わない!」 「笑ってないよ?」 「笑ってるってば!!」 「笑ってないって。」 「………笑ってたろ。」 「はははは。」 『そらみろー!!!』 そうして側にある命の匂いに揺さぶらせそうになる。 死に囲まれて生きてきたカカシにとって、まだ幼さを残す、生きている匂いの強い子どもほど眩くてやさしいものはなかった。 (ああ…) 「生きてるニオイがする。」 「ん?なんか言った?カカシセンセー!」 「―――なーんでもないよ。」 ただ、今はこの幸福は今は心深くに優しく沈めて。 ■■■ 柔らかな土と、 澄んだ水を、 食んで 愛しんで 器とするは 人の子よ 「ダメです。カカシは今故障中ですからー。」 暗部の依頼をやんわり断って、下忍チーム班担当カカシ教諭は笑って応えた。 「もう血も涙もないカカシ、じゃなくなっちゃったんですよね。」 真実を知って、少年達は苦しむだろか。悲しむだろか。 せめてそれまで、血まみれのこの手で導いてやろか。 この赤い瞳がうずく。 生命のニオイ。 いきている、ニオイ。 涙。 ■■■ |
■はたけカカシというヒトは、難解。飄々としていて掴みドコロがなく、己を見せない『忍者』そのもの。 ■悟らせない。気取られない。やんわりゆるりと自我を消す。その行程すら教えない。 ■薄い人相。強くない存在感。ルーズさも、マイペースすら術のひとつ。 ■生きているものなど、勝者ひとりしか存在しない、暗部という死の世界に骨の髄まで浸かった彼が、 ■子どもという一番生命のニオイの強いモノに触れたら? ■そんな、感じです。ハイ。 2001/10/23 UPDATE |
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