『しょうがねえだろ』
010519 yahiro_m sama kiriban


三村がまるで嘲笑うように、静かにこっちを見てる。
「充。」
喧嘩っぱやいと思ったが、我慢ならない。
そんな目で俺を―――違う、俺の横にいるその人。綺麗な、綺麗な。
「よせ。」
静かな声が、その人から放たれてまるで呪縛の様に俺に絡む。
何で?ボス!
あいつ、ボスのこと視線で汚した。
汚しやがったんだ。

「沼井ちゃんは、桐山君の事信頼してるのね。ううん、違うわ。
そういうの、何て言うか知ってる?
―――盲目的な崇拝、って言うのよ。」
悟りきった様にヅキが言う。知るかよ、そんなの。俺は俺、ボスはボスなんだ。
そう、ボスは―――ボスなんだから。
「桐山君のことは好きよ。沼井ちゃんと、多分負けないくらい。
だってあんな綺麗で―――空っぽな人、他にいないもの。
匂いのない男って、人形みたいでそそると思わない?」
無性に腹立たしくなって、俺はヅキを無視した。

ふらりと、あのひとは時々なにも言わずに行動するから、慌てて探しにいく。
探して、捕まえておかないと。手を離すとあのひとはきっと戻ってこないんだろう。
未練とか、なにもないまま消えちまうんだろう。
それがまた酷く辛かったりするんだけど、そういう感情は無視するに限る。
たまに無視できなくなるのは―――。
音楽室から出てきた時の、ボスのひどく穏やかな横顔。
七原秋也と話す時の、透き通るようなあの表情。
あんな目で俺も見てほしいな、って思った。


分かってる。これはガキの駄々みたいなもんだ。
構ってもらえなくって拗ねてる、ただのガキなんだ。
ボスが三村信史と対峙する。鋭い視線の交差―――ほら、あの男に負けない存在感。堂々とした三村を逆に呑み込んじまえるような圧倒的な力。
ボスが七原秋也と会話する。短い言葉の交差―――ただ、泣きたくなるような空気の綺麗さ。七原も、まるで夢でも見てるかのような目をしてボスを見上げる。
そんな三村に対して噛み付いてやりたい凶暴な衝動が生まれて、
そんな七原を見て後味の悪い名残が口の中いっぱい広がって。
…いつも、思う。
追っかけるのはいつも俺でさ。
手を引っ張ってあちこち連れまわして、いらねーこと教えて、ごくごくとまるで水でも飲むような気安さで吸収していくボスに夢中になった。
とっときの玩具を手に入れた気分?冗談じゃない。俺がボスを?全く、冗談じゃない。
あの人が玩具でおさまる器なら俺はとっくに、ふん縛って手足の様にこき使ってるさ。
俺がボス、ボスが俺。
でもあのひとは、あのひとだった。
桐山和雄っていう、とてつもない存在で、俺の感覚はそれこそ玩具みたいに簡単に、粉砕された。

綺麗なひとなんだ。
でも時々神経質なほど整えられたすべてに、ぞっとしないでもない。
綺麗すぎるんだ。
だから時々無神経なほど冷めた横顔に、恐さを覚えてしまう。
コワイ。だけど綺麗だ。
キレイ。だけど怖い人。

三村はムカツク。
―――堂々と、あの人の前に立ち、顔をあげ、眼差しを緩めず―――
向かい合う力を持つ男だから。

七原はイラツク。
―――いつも明るく真っ直ぐなのに、ボスに対しては気後れしたように茫然とし―――
それでいて純粋にあのひとを絡め取る。

「チクショー。」
俺はどんくらいの力があるだろ。
俺はどんくらいでボスを留まらせることができるだろ。
「―――チクショー…」
ねえボス。
そんな早く歩いていかなくったっていいじゃん。
歩調を緩めたっていいじゃん。
振り向いたって(振り向いてよ)
前だけ見つめてないで(横に俺がいることに気付いて)
どんどん先に進まないで…



置いてかないでくれよ。なあ、ボス、ボス、ボス、ボス―――。



―――俺、馬鹿かなァ。




夕方。偶然七原に出くわした。
いっつもつるんでる連中―――国信だの、杉村だの、三村だのがいなくって意外に思う。
「よ。」
通り過ぎるのもなんだけど、何て声かけたらいいんだか。
七原は他の連中と違って、全然空気が張り詰めてない。
こっちを警戒してねえっていうか、単に無防備な馬鹿なのか。
他の連中がびくびくしてこっちの様子をうかがう中、平然と俺たちに話し掛けてきたり―――勿論、ボスと接触する事はそれまでないに等しかったけど―――笹川なんか、「イガイと七原って話しやすい」なんてノンキなこと言いやがって。
でも、ほんと不思議に、するっと入りこんでくる変な空気を持ってて。
……白状する。
俺は嫌いじゃねえんだ。コイツ。すげえイラツクんだけど。
イライラは、違う意味でのイライラなんだ。
嫉妬…かもしれない。けどそうじゃない。そうじゃなくって。
―――わかっちまうんだ…と、思う。よくわかんねえんだけど。
「…沼井?」
驚いた様に振り向いて、照れくさそうに笑うコイツが。
不器用で、何したらいいかわかんなくって、でも、それでもボスを―――桐山和雄から目を放せなくなってしまった、捕われの身の上。
「あれ。沼井も一人?珍しいな」
「お前こそ、お取り巻きはどうしたんだよ?」
「お取り巻きってなんだよ。」
声を立てて笑う仕草は、凄い邪気がねえっていうか、能天気っていうか。
なのにボスを見るときだけ、お前は泣きそうなんだよな。
どうしたらいいかわかんなくって、途方にくれてるんだよな。
「…お前、辛くねえの。」
「え?」
「ボス見てて、辛くねえの?」
ぽつりと言葉を吐いたら、絶句した七原の眼差し。
「そう、だな。」
舌で言葉を探り当てる様に、ゆっくり。
「―――わかんねえ。沼井は辛いの?」
「さぁな。」
な。
な、そうだろ。
コイツ、イラツクわ。
俺みたいで―――嘘、違う。コイツはちゃんと対等になれる。だから余計イラツク。
似てて、1歩も2歩もリードしてる―――歩く力のあるコイツに。
でも似てるんだ。
俺に似てるんだ。
「なんか、沼井、頭なでてー。」
「なんだよっ!」
自分のほうが可愛い顔してやがんのに、なんて言いぐさだよ七原。
「桐山がお前の事気にかけてるのわかったような気がする。」
苦笑して、言った。
うるせえな。チクショー。……これで俺何回言った?
「―――しょうがねえだろ。」
クソ、泣きそうになったのは秘密だ。絶対。





「―――あ。」
意識が混濁してる。そうか。死ぬときって過去のことを走馬灯…だっけ?のように、思い出すとか何とか痛ェ。身体のあちこち。あ、皮膚が抉れた。指が、飛んだ感じ変。わかる、変な感覚鈍い。身体の真ん中が火を吹いたみたいにあつい。いやだ。まだはなしたいことあるんだ、おねがいだよ。まだ、ボス、ゴメン。ボス、なんで謝るんだよ俺、殺されてんのに違うよきっと、特別になれなかった馬鹿だ俺そうじゃなくって、ゴメン。ホントは、俺知っててううん今気付いて、ボスが、あなたが、ひどい孤独で感情すら耳鳴りうるせえ。どうしよ泣きそうちがうまた混濁きもちわるい泣いてるんだ。俺、泣いてる。ボス、ボスはナナハラもミムラも殺すの?ねえあんなに、すごく、いとおしそうな、しりたがりな、こどもみたいなめでふたりをみてきれいだったよすげえ、きれいだった。おれだいすきだった。あんたのこと、たすけてあげたかったなあ。楽しかったよ嘘でも、あんたおれのことすきだろ。へへ最後ぐらいいい思いで死なせてよこれくらい、うん。ゴメン。だいすきなのは俺。はは。なんで俺意識続いてんのかな。痛いよ。あれ痛くねえ。そっか 痛みもかんじないくらいボスは俺を あ。 そうか。さいごまでゴメン。わかった。ありがとう。俺喧嘩はいいほうだけど、痛みに強いってわけじゃないって はなしたこと ああ 目が。まぶしい、めが。しょうがねえよな こいんは ぼすは おれは うらぎらないからね銃口なんかむけてごめんね。あんたまもりたかったよ。まもってあげらんなくてごめ―――
星がきれい。
き…れい。


しょうがねえだろ、すきなんだから


ありがと。
ね、ボス

いき


よ       な





後は覚えてない。当たり前だよな。
…じゃ、バイバイ。そゆこと。
どうしようもない話しです…。(死)しょうがねえだろ!シキなんだからよゥ!(暴)
そんな暴動は置いといて。沼井…ゴメン…ホント…わかんないッス…沼井って誰とか最初いってたっけなあ…ああ懐かしい。てなわけで444打リク、「沼桐」です。全然沼桐じゃないしね!アハー!はじめて日本語のタイトル。そんな新しい気持ちも含めつつ。うそ臭く。沼井の喋り方誰か教えて。オヤスミナサイ、とりあえず永遠に。




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